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東京高等裁判所 昭和54年(行コ)42号 判決 1980年2月14日

控訴人

石垣食品株式会社

右代表者

石垣敬義

右訴訟代理人

山崎清

被控訴人

建設大臣

渡辺栄一

右指定代理人

菊池健治

外五名

主文

本件控訴を棄却する。

控訴費用は、控訴人の負担とする。

事実《省略》

理由

一当裁判所も、控訴人の本訴請求を失当と判断するものであり、その理由は、次のとおり附加するほかは、原判決理由説示と同一であるから、これを引用する。

1 土地区画整理法一〇三条一項の規定に基づいて換地処分の通知が関係権利者に対してされたときは、これにより、換地処分は、当該権利者に対する関係において、(イ)その者が有していた従前の宅地又はその宅地について存する権利の目的である宅地若しくはその部分(以下「従前の宅地等」という)。に代えて換地又は換地について右権利の目的となるべき宅地若しくはその部分(以下「換地等」という。)を定め、又は定めないこと及び換地等を定めたときはその位置及び地積、(ロ)右換地等を定め、又は定めないことによつて生ずる不均衡を清算するための清算金を交付するか否か及びこれを交付するときはその金額等が一応最終的に確定するという効力を生ずるのであり、同法一〇四条一、二項が、換地等は同法一〇三条四項の公告があつた日の翌日から従前の宅地等とみなし、換地等を定められなかつた従前の宅地等に存する権利は右公告があつた日の終了した時において消滅するものとすると定め、また、同法一〇四条七項が、清算金は右公告があつた日の翌日に確定すると定め、これらの効果の発生を右公告にかからしめているのは、右公告自体は本来換地処分のあつたことを一般に周知させるための手段であるが、換地処分に伴う権利関係の変動の全体的統一的実現の必要から、すなわち、相関連して同時に実現するのでなければ錯綜混乱するおそれのある多数の権利関係の変動を同一時点で一挙に実現する技術的方法として、換地処分の通知がされたことにより前示のとおり換地等を定め、又は定めないことが確定され、あるいは、清算金を交付することが確定されたことに伴う従前の宅地等に存した権利の換地等への移動又は消滅、あるいは、清算金交付請求権の発生といつた換地処分の効果の発生の時期を、各関係権利者に共通の時点である公告があつた日の翌日の初め(公告があつた日の終了した時)としたにすぎないものであり、換地処分は通知及び公告という二段階の告知行為がされてはじめてその効力を生ずるとする控訴人の主張は、独自の見解であつて、採用することができない。控訴人は、換地処分の通知後公告までの間に権利関係の変動があつたときは公告時の権利関係に即して換地処分の効力が生ずるとしてこれを右主張の一論拠とするが、換地処分の通知後公告までの間に従前の宅地等について権利者の変更があつた場合には、同法一二九条の規定により、従前の権利者に対してされた通知は新たに権利者となつた者に対してされたものとみなされ、その結果、換地処分の通知によつて生ずる前示の効力は新権利者との関係で生じたものとみなされることになるのであつて、換地処分の公告は、右のように新権利者との関係で既に効力を生じたものとみなされた換地処分につき前示の効果を発生させるにすぎないのである。なお、土地区画整理事業によつて整備改善される公共施設(土地区画整理法二条一項参照)の用に供する土地が換地処分の公告があつた日の翌日に国又は関係地方公共団体に帰属することとされ(同法一〇五条)、同事業によつて設置された公共施設が同日に地元市町村の管理に属することとされている(同法一〇六条)のも、軌を一にするものといえよう。

2 控訴人は、また、換地処分は公告があるまでは効力を生じないから、公告前に審査請求期間を進行させなければならない理由はないと主張する。しかしながら、換地処分は、それが関係権利者に通知されることによつて前示のような効力を生ずるのであるから、この法律関係を早期に不動のものとするため、公告がされるのを待たず、右通知のあつた日を基準として審査請求期間を起算することはなんら不合理とはいえず、また、換地処分の通知によつて処分の内容は既に明らかとなつているのであり、公告を待つてみても、それ以上に処分内容が具体化又は明細化されるわけではなく、また、処分理由が開示されるわけでもないのであるから、通知のあつた日を基準として審査請求期間を起算することにしても、処分の相手方である関係権利者が審査請求をするについて特段の不利益があるものとも認められない。もつとも、右のように通知のあつた日を基準として審査請求期間を起算することにすると、審査請求期間の経過により換地処分が不可争的となつたのに、いまだ公告がされず、あるいは、公告に固有の瑕疵があつて取り消され又は当然無効とされるなどのため、換地処分の前示の効果がなお発生しないというような場合がときとして起こりえないでもないが、このことは、換地処分の効力を早期に不動のものとするため通知のあつた日を基準として審査請求期間を起算すべき必要性と合理性を少しも損うものではなく、また、処分の相手方である関係権利者が通知のあつた日を基準として起算される審査請求期間内に審査請求をするについてなんら妨げとなるものでもない。

二よつて、原判決は相当であり、本件控訴は理由がないのでこれを棄却し、控訴費用の負担については行政事件訴訟法七条の規定に基づき民事訴訟法九五条、八九条の例により、主文のとおり判決する。

(林信一 高野耕一 石井健吾)

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